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「新型うつ」は病気か?それとも...。Vol.4

「新型うつが増えた要因は、大きく分けて3つの答えに集約される。という話を前回しました。

その3つの内容は下記の通りです。そして、前回(1)と(2)について説明しました。

1)社会的背景・特に若者の変化。

2)メディアの取り上げ方の変化。

3)診断基準と新薬の登場。

 

今回は(3)について説明しましょう。1990年に世界保健機関(WHO)によって定められた

精神疾患に関する診断基準「ICD10」と1994年にアメリカ精神医学会が発表した「DSM-Ⅳ」に

よって、精神医学の世界は大きく様変わりしました。特に後発の「DSM-Ⅳ」が臨床に与えた影響

は絶大なものでした。

 

このチェックリストに適合すれば、16種類の精神疾患の診断が出来てしまうのですから、医者にと

っての拠り所となるのに多くの時間は必要ありませんでした。「DSM-Ⅳ」以前の精神科は、決まっ

た診断基準が無かったので、個々の医師によって、病名さえ一致していなかったのです。

 

臨床の現場では慎重を期すため、入念な聞き取り調査をし、抑うつ状態などの状態像を把握し、

数週間様子を見て、初めて薬を指示するという慎重さでした。世間の精神疾患への偏見も強く、

病名を声高に述べると患者やその家族に与える影響が大き過ぎたのである。

 

しかし、「DSM-Ⅳ」が定着すると、すぐに診断が下せるし、適切な治療法も指示できるので確定的

な診断が可能になったのです。その上、世紀の変り目にに画定的な新薬が登場した事で大きく医療

現場が変わりました。脳内のセロトニン(神経伝達物質)濃度を維持する事で、うつ状態になるのを

防ぐSSRIと称される薬の登場でした。しかも、副作用が既存の薬より極めて少ないのも医師たちには

朗報となったのです。朗報なだけでなく、精神科の医師が急増したのもこのためでした。

 

1996年には1万百人だった精神科の医師が、2010年には1万四千二百人。と、1.4倍になり、精神科の

診療所は1996年には3198軒、診療内科は、662軒しか無かったのが、2008年には、精神科が5629軒、

心療内科が3775軒と合計では2.4倍ですが、心療内科だけを比べてみれば、12年間で5.7倍に増えた事

になります。「精神科」の看板は潜りにくくても、「心療内科」の看板なら潜りやすい。という患者

の心理を狙ったものだと言えましょう。

 

診療報酬の改定も影響していると示唆する関係者もいます。1996年以後の中医協(中央社会保険医療

協議会)の診療報酬の見直しで、病院における診療報酬よりも診療所の診療報酬の方が高く改定され、

大手病院までが入院施設を持たない精神科を外部に独立させ、診療所として運営するように様変わり

していったのです。

 

1990年代まではうつ病など精神疾患への偏見やタブーは存在していたのですが、ここ10年で理解が

進み、偏見やタブーが薄れてきたのは良い事なのですが、昔なら白い目で見られるのが嫌で来なか

った軽い症状の人。いわゆる「新型うつ」の人が気軽に心療内科を訪れるようになった事で、「治療

は嫌だけど、診断書は欲しい。」などという不謹慎とも言える患者が出て来る結果となったのです。

 

何度も繰り返して申し訳ありませんが、ここまで否定されても、私は「新型うつ」もれっきとした

病気だと言いたいと思います。「診断基準に当てはめるとうつの部類だから。」という理由では

ありません。「どんなに普段の生活がスムーズに出来ても、職場の人間関係のささいな軋轢が原因」

であってもその人にとっての軋轢の大きさは他人が決める事では無いと思うからです。この点につい

て、次回少し触れてみましょう。(つづく)

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